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手紙37 空っぽのティーカップ(3)

 投稿者:竹哲@らくらく安楽詩の会  投稿日:2019年 9月26日(木)06時11分27秒
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  「生きている死者からの手紙」(1914年の出版、ノンフィクション、著作権フリー)
        エルザ・バーカーによる記録
        金澤竹哲・訳


手紙37 空っぽのティーカップ(3)



 この答えには驚いた。まだ地上に戻っていない母親の霊は、おなかを痛めて産んだ子が霊界に帰還するときが近づくと、独特の戦慄を感じ、御産のようにある種の共感を覚え、母親になった甘美さを味わうと聞いていたからだ。

「では、お母さんはもう生まれ変わって地上にいるんですね?」
「あなたは例の異教の教えを信じているのね?」彼女はかすかに優越感を感じさせる口調で言った。
「生まれ変わりなんて、神智学者とかの、変わった人だけが信じていると思ってました」
「私はいつもから変わり者でしたから。しかし奥様、地上に住む者のおよそ4人に3人は、なんらかの形の輪廻転生という考えに規しんでいるんです」

 私たちはしばらく話を続けたが、そのあいだじゅう、誰も待っていないこの気の毒で孤独な女性をどうにかしてやれないかと考えていた。私が知っている救いの天使の顔を思い起こし、地上の社会通念からすると、どの天使が一番適任だろうかと考えた。天使のうちで最も気高い者はふつうは、私の庇護下にある女性が親しんできた上品な社会の婉曲表現を使えば、こちらに来たばかりの不幸な女性の世話をしている。その他の天使はどこにでもいるが、たいていは彼らを最も必要とする魂につきそっている。だが、私のそばの女性が必要なのは緊急援助でなく本格的な援助なのだ。もし、ライオネルがここにいれば、しばらく彼女の気晴らしになるだろうが。

 きみの世界にレース編みやうわさ話に興じる女がいるように、こちらの世界にもレース編みやうわさ話に興じる女がいる。私は、そういう女たちと交流しておけば良かったと悔やんだ。驚いたかね。一生続けた習慣を一瞬で捨てられるなどと思ったりしないだろうね? 地上の女がしばしば編み物をしたいと夢見るように、こちらの女も同じことを夢見るのだ。こちらの世界で編み物をするのは、君の世界で夢を見るのと同じぐらい簡単なのだ。



 
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