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手紙37 空っぽのティーカップ(2)

 投稿者:竹哲@らくらく安楽詩の会  投稿日:2019年 9月20日(金)10時39分1秒
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   自分のことしか考えなかった人が霊界にゆくと・・・。




「生きている死者からの手紙」(1914年の出版、ノンフィクション、著作権フリー)
        エルザ・バーカーによる記録
        金澤竹哲・訳


手紙37 空っぽのティーカップ(2)


「私は数カ月前にここに来ましたが、かなり経験を積みました」
 私の言葉に、彼女が当惑しているのが表情に出た。私の古風な服を一瞥して、数カ月しかいないという言葉を信じられないと思っていることがわかった。
「たぶん、あなたは役者なんでしょう」と彼女。
「私たちは、ここでは誰もが役者なんですよ」と私。
 これで彼女の当惑はさらに深まって、理解できませんと言った。かわいそうな貴婦人! 私は気の毒になって、できるかぎりの力でで、ここの状態について説明を試みた。

「まず第一に、ここはでは理想が実現するということを理解しなくてはいけません」と私は言った。「たとえば、長い間王になりたかった男がいるとします。ここでは本人が望めその役を演じることができ、それを見て笑う者はいません。どんな霊にも自分の好きな夢があり、それを思うままに実現させているのです。

「奥様、子供は、遊び仲間をからかったりしませんね、彼の寛容と礼儀が必要です」

「天国は遊び場にすぎないのですか?」彼女の声にはショックがあらわだった。

「いいえ。でも、あなたのいるのは天国ではありませんよ」

 彼女がけげんな顔をしたので、私はすぐ付け加えた。

「もちろん、地獄にいるわけでもありません。地上にいたときは、どの宗教を信じていましたか?」
「ええ、私の国で、私のような身分の者がふつうに信じている宗教です。ですが、それほど深く考えたことがありません」

「では、煉獄のことは、ご存じではないでしょうね」
「私はローマカトリックじゃありませんから」彼女は少々気分を害したようだ。
「それでも、ローマカトリック教徒があなたのいまの立場にいれば、自分は煉獄にいると思うでしょう」

「たしかに、あまり幸せとは言えません。なにもかもが奇妙なんですもの」
「こちらにお友だちはいないんですか?」と私は聞いた。

「知り合いはたくさんいました。でも、人と深くつきあうのは好きじゃなかったんです。おもてなしはかなりしました――主人が政治家でしたので」
「ここいる人の中に、あなたがいつか、特に親切にしてあげたり、悲しいときに慰めてあげたとか、貧しさをやわらげてあげた人もいるでしょうね」

「私たちの宗教の慈善事業を支援したことはあります」
「そういう援助は公的なものですから、ここであなたを覚えている人は少ないでしょう。お子さんは?」
「いません」
「兄弟や姉妹でこちら側に来ている人は?」
「たったひとりの弟が、身分の低い者と結婚すると言うの喧嘩しました」
「それでも、お母さんならいらっしゃるでしょう。お母さんは、あなたを待っていたと思いませんか?」
「いいえ」


 
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