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手紙31 天空の数学的難問(3)

 投稿者:世話人の竹哲です  投稿日:2019年 7月 2日(火)06時24分3秒
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  「生きている死者からの手紙」(1914年の出版、ノンフィクション、著作権フリー)
        エルザ・バーカーによる記録
        金澤竹哲・訳




手紙31 天空の数学的難問(3)


 私が矛盾したことを言っているとか、曖昧だと言って責めないでほしい。私は客観的な意識状態がここでも可能であることと、君たちにも主観的な意識が可能だと言ったが、傾向としては単に反対方向を向いているにすぎない。君は数週間前に書いたあの恋人たちのことを覚えているね。男はしばらく前からこちらにいて、女を待ち続け、彼女がふたつの世界を隔てる沼地を渡るのを手助けした。
 私は先日、恋人たちを見たが、歓迎されなかった。それどころか、遂に一緒になれて浸り切っている主観的な至福の状態から目覚めさせたので、迷惑しているようだった。

 彼女を待っていた年月の間、彼は期待感で自分を目覚めさせていた。一方、彼女はここにいる彼のことを考え続けていたので、極性が保たれていた。現在、彼らは一緒になり、彼が希薄な世界の希薄な素材で彼女のためによろこんで建てた「小さな家」に住んでいる。彼らはどこを向いても互いの顔を見つめている。満足しているのだ。ほかに何も要らない(互いにそう言い合っている)。そして主観的な至福のなかに共に浸り切っている。

 さて、この再会という至福の状態だが、彼らにはそれを楽しむ権利がある。誰もそれを奪えない。彼らは地上とここで努力してそれを勝ち得たのだし、リズムの法則によってもそれは彼らのものだ。彼らはこれからも長い間、一緒にいた時や離れた時の過去の体験を思い出しては楽しむだろうと思う。その後のいつの日か、ふたりうちのひとりが甘美さに飽きることになる。彼か(彼女の)魂の筋肉が運動不足に音を上げる。彼か(彼女)は、スピリチュアルなあくびをして、作用と反作用の法則によって出てゆき、戻ってはこない。

 彼(彼女)はどこへゆくのと君は聞くだろうか?もちろん、地上へ戻るのだ!
 想像してみるといい。彼(彼女)が、達成感からもたらされた主観的な至福の状態から目覚め、祝福された健全な孤独という短い散歩に出たとする。すると、朝目覚めたばかりの注意力を心と目に感じ、彼(彼女)は、地上の恋人たちに引き寄せられてゆく。突然、物質への呼び声が、血と温かさへの呼び声が高まり、極限の力に達するほどの活動への呼び声が、このエーテル世界にいる半分覚醒した魂を捉えるのだ。そして――

 彼は再び物質の世界に戻っていた。彼は地上の肉体のなかに沈み、隠れている。誕生を待つ。彼はその前の休息によって力強く生まれるだろう。彼の力のまとまりが大きければ、「産業界の大立者」になれるかもしれない。私は、「彼か彼女」と言い方で始めたが、それを変えよう。男はほぼ確実に、積極的な極性があるために最初に目覚める。

 さて、あの恋人たちのことを想像で思い描くことで、私はすべての魂が地上に戻るという教義を説いているわけではない。私は単に、このふたりはどのように地上に戻るか推察しているだけだ(なぜなら、彼女が目覚めてひとりっきりだと知れば、たぶん、彼の後を追うからだ)。また、彼らがそんな風に地上に戻るだろうと考える理由は、彼らがあまりにも主観的な至福に浸り切っているからだ。

 彼らがいつ地上に戻るか?確かなことは言えない。たぶん来年か、たぶん百年後だろう。彼らの力のまとまりの具体的な分量がわからないし、また彼らが、激しい反作用なしにいつまで主観的な至福に耐えていられるかもわからない。
 君は、いつかは私もいま述べた至福の状態に沈むだろうと思っているね。たぶんそうだ。私もそれを楽しむだろう――だが、そんなに長くではないし、まだ先のことだ。しかし、ここには私と共にいてくれる恋人はいない。

 
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