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手紙25 影のない世界(後半)

 投稿者:世話人の竹哲です  投稿日:2019年 4月10日(水)05時38分30秒
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  「生きている死者からの手紙」(1914年の出版、ノンフィクション、著作権フリー)
        エルザ・バーカーによる記録
        金澤竹哲・訳


手紙25 影のない世界(後半)

 ライオネル少年のことは長い間話さなかった。彼はいま、自分を再び産んでくれるエンジニア一家を選ぶアイデアに夢中になっている。彼の考えはいつもそこに戻ってゆく。
「どうしてそんなに急いで私のもとから離れてゆくのだ?」。彼がこの話題を持ちだした時に聞いてみた。
「でも、ぼくはあなたから離れるつもりはありません」と彼は答えた。「夢のなかであなたを訪ねます」
「すぐにではないね」と私は言った。「君は囚人のように、目が見えず耳も聴こえない状態で長く過ごすから、私が地上へ戻った後でなければここを訪問することはできないかもしれないね」
「それじゃ、ぼくと一緒に行こうよ」。彼が尋ねたのは、「ねぇ、お父さん、ぼくたち双子で生まれてはいけないの?」
 このアイデアは突拍子もないので、私は大笑いした。だが、ライオネルは本気だった。
「双子っていますよ」と真顔で言うのだ。「ぼくはボストンにいた頃、双子の兄弟を知っていました」
 私が地上へ帰還する時、誰かと双子になろうとは思わない。だからライオネルには、私と一緒にいたいのなら、しばらくいまいる場所にいてほしいと言った。
「でも、どうして一緒に行けないの?」。彼はまだこだわっていた。「せめて従兄弟や近所の人はどう?」
「そうだな、たぶん」と私は言った。「お前が必要以上に急いですべてを台無しにしなければだ」
 この少年には不思議なところがある。この世界では、希薄な素材を使えば無限の可能性があり、発明したり実験もできる。それでも彼は、鉄鋼に自分の手を触れたいのだ。なんと奇妙な!
 ある夜、少年を連れて君を訪ねよう。それで君も彼を見ることができる――君が熟睡する前という意味だが。われわれは本物のビジョンとして見えるだろう。睡眠中のビジョンは、目覚める時に通過する物質の振動によって混乱してしまう。少年のことを忘れてはいけない。私は彼に、ここに来て君の手を通して書く方法を明かした。彼は興味津々だ。
「ぼくもこの方法で電報を打っちゃいけない?」と聞いた。私は、それはいい考えではないと答えた。彼は、代金を払って送られる地上の電報のいくつかを邪魔しかねない。
 時には、彼を伴いパターンの世界へ上昇する。彼はそこに自分の小さな模型を持っていて、私が他の事柄を調べている間、それで遊んでいる。それは車輪の模型で、彼は指先から電気を出して回転させている。そうだ、鉄でできた模型ではない――君の知っている鉄ではない。君が鉄を呼ぶものは重すぎる! この世界に裂け目すら作らず、地上へ落下してしまうだろう。
 理解してほしいのは、ふたつの世界は違うバイブレーションの物質でできていて、かつ、違う磁力でチャージされていることだ。ふたつの物体が同じ空間を占めることはできないと言われるが、この法則はふたつの物体には当てはまらない――ひとつが君の世界に所属し、もうひとつが私の世界に属する場合だ。水は熱湯になっても濡らすことができるように、1フィート四方の空間は、1フィート四方の地上の物質と1フィート四方のエーテル素材の物質を収容することができる。
 これは要点をはぐらかすような話ではない。君たちは、私たちがここで使っている物質を表現する言葉を持たない。それは君たちが何一つ知らないからだ。ライオネルと彼の電動車輪がもしも、君の暖炉の前の絨毯に置かれたとしても、君には見えない。燃える薪の魔法の力を借りても見えないだろうね。少なくとも昼間は絶対に見えない。
 ある夜――このことは別の機会にしよう。いまは行かなくてはならない。


 
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